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「向こうもちょっと寄ってみただけかもしれない」       笠原嘉「精神科における予診・初診・初期治療」

 

 

“精神科医というと、

心因性」を第一に考慮することの専門家であるかのような誤解が

外部の人によってしばしばもたれるが、そうではない。

たしかに精神科医は「精神現象の病的側面へのアプローチ」を専門とするものだけれども、

そのことは「精神異常現象の淵源を何よりもまず精神的原因の探索からはじめる」ということと決して同義ではない。”


笠原は、医師が精神異常の原因を探るときに、

まずは体因性(体の病気に引き続いて起きる精神異常)

次に内因性(特定のきっかけ無しに起きる精神異常)

それでも説明がつかないなら心因性(心理学的な事件によって引き起こされる精神異常)

という順番で行うことの重要性を強調している。
そもそも心因性の精神異常なんて滅多に(少なくとも演劇や文芸作品に現れるほど頻繁に)目にするものではないとも。

 


ただこの、“体因性の精神異常”というものを、広く誰にでも伝わるような言葉でなかなか説明できない。

脳梗塞やった後の人、泣いたり怒ったり感情的になりやすいってよく言いますよね」

「それって本人が色々ストレス溜まるからじゃないんですか」

「うーん、確かに、確かにそれもあるんですけどね、うーん、何と言ったらいいか…。
では例えば、お腹が空くとイライラしますよね、あれなんかも体の状態が精神に…」

「お腹が空いたら誰でもイライラするでしょう。何言っているんですか。」

というような仮想の対話をいつも繰り返している。
特にお腹が空いた時などに。

 


“ところで治療者が病人に治療中「性愛」を覚えたらどうしたらよいか。

かつてはそのこと自体を不道徳として話題にすることさえ避けられたが、

今日、外国の文献を見ていると、治療者が病人にそのような感情を抱く事実を諸家は率直にみとめ、治療上の位置課題とするまでになっている。

もちろん精神分析医を登場させるこのごろの小説に出てくるほど劇的ではないが。”

 

返す刀、という言葉の切れ味である。

これには由紀夫もタジタジだったと思う。

 

 

 

 

 

精神科における予診・初診・初期治療