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発作と宗教体験/オルガスム


神経内科医が研修医に送る小噺22選

ニュートンはなぜ人間嫌いになったのか―神経内科医が語る病と「生」のドラマ


1 脳梗塞/失認 

脳のある部分が機能を失うと、「失認」が生じる。
例えば、そこにあるのが「これは手である」ことは理解するが、
「これは自分の手である」ことが分からなくなる。

 

2 Wilson病

体内に銅が沈着する稀な疾患。
数万人に1人のごく珍しい疾患であっても、詳細に問診・身体診察するだけで診断できることがある。
例えばWilson病では目の中に銅沈着(Kayser-Fleischer角膜輪) が観察される。

 

3 重金属中毒

晩年に偏執的な人格変化を来したアイザック・ニュートン
彼は王立アカデミーでの権力を利用して、自分に反対する人間に執拗な嫌がらせを加えていた。
また、書簡のやり取りから、極端な抑うつ症状・異常言動があった時期についても研究されている。

この性格変化は、彼が盛んに行っていた錬金術研究、
つまり水銀を中心とした重金属への暴露が原因なんじゃないか、というお話。

 

4 てんかん発作

マホメットはコーランの中で、自分は楽園を見、そしてその中にいたと言っている。小賢しい愚か者は皆、マホメットはたんなる嘘つきでペテン師だと思い込んでいる。

しかし、違うのだ!彼は嘘なんかついていない!彼は私と同じてんかん患者であり、彼はてんかん発作の間、本当に楽園にいたのだ。
私には、その至福の時間が数秒なのか数時間なのか、それとも何か月も続いているのかわからないけれど、それは真実であり、私は人生で得られるどんな楽しみとも、その至福の時間を交換するつもりは全くない。」 ドストエフスキー


一部の患者では、てんかん発作中に幻視・幻聴が出現することがある。


「ものが見える」ことや、「声が聞こえる」ことは、脳の一部で神経細胞が興奮することであるから、「てんかん発作≒神経細胞の過剰な興奮」の最中には実際には存在しない感覚刺激(つまり幻視とか)が生じる。
ごく珍しいが、異常興奮の起きる部位によってはオルガスム様の体験を生じる場合もある、という症例の提示。


見神体験(神を見た、お告げが聞こえた、或いは楽園に行ってきたという体験)は、あらゆる時代・あらゆる場所で記録されている。
それらの中には、てんかん発作でないかと推測されるものが多く混ざっている。

具合的には、
・コミュニティ内の人間全員に均等に起きるのではなく、一部の人に繰り返し起きる
・その「一部の人」はしばしば血縁関係にある。(いわゆる「巫女家系」)
・体験はしばしば突然生じる
・体験中の幻視はしばしば「非常に明るい・眩しい」ものである

といった見神体験の特徴は、

てんかんが家族内集積性があること(有り体に言えば「遺伝する」こと)
てんかん発作は突然起きること

てんかん発作による幻視は(理由は解明されていないが)眩しいものとして記憶されること

で説明されるのではないか。

 

5 パーキンソン病


6 ミオクロニーてんかん

ウトウトしている時に、ビクッとなることあるけど、分類上はあれもてんかん発作らしい。
いい気分で半睡眠状態になると、抑制系の神経細胞が仕事をサボるから結果、抑制されるはずの細胞が余計に興奮してビクンと来る。


7 遁走(fuge)

本人は何の自覚もなく、どこか遠くの町に出かけてしまい、突然我に返ることがある。つまり知らない街で気づくと独りぼっち。
道中の記憶は一切ないが、車の運転はしっかりしているし、途中で食事までとっていることがある。
不思議な話だ。


8 小人症/クロイツフェルト・ヤコブ病

脳の下垂体と呼ばれる部分から、成長ホルモンが分泌される。
この機能がうまくいかないと、下垂体性小人症になる。

下垂体性小人症の治療のために以前は、死体から下垂体を取り出して、それを患者に投与していた。(今は勿論やってない)
その死体が、感染性のある疾患、例えばクロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)であったりすると、投与を受けた患者の一部にこれが感染するかもしれない、という話。


9 群発性頭痛

その場にあった拳銃で自分の頭を打ちぬいてしまう人がいるという位、
激烈な痛みを特徴とする疾患、群発頭痛。


10 職業性ジストニア

ある特定の動作にのみ伴って、意思とは異なる動きが加わることがある。
原因はよく分かっていない。
感覚入力を少し変えてやると改善することがある。
(例えばペンの太さを変えるとか、手の左右を変えるとか)


音楽家でもそういう話を聞いたことがあるが、
バイオリンが弾けないならチェロを弾けばいいということなのかな。


11 神経性梅毒

あの偉人もあの有名人もじつは梅毒でした、系の話。
この手の話は患者をバカにしているようであまり好きじゃない。


12 多発性硬化症


13 老化について


14 寄生虫感染症

聖書の○○の挿話は実は××が原因なんじゃないかな、そうするとあれもこれもうまく説明できるよ、系の話。
あぁそうなんですね感が強い。


15 ハンチントン舞踏病/遺伝性疾患の患者への告知について

 

16 抗精神病薬によるアカシジア

抗精神病薬はドパミン受容体という構造の機能を抑えるが、
受容体抑制が過剰になるとアカシジアと呼ばれる副作用が出現する。
アカシジアは、「ジッとしていることができなくなる」ことで、ひどい場合には一晩中、眠らずに部屋の中をぐるぐるただ歩き回ったりする。

適切な投与量の調整でアカシジアは消える。


17 謎の皮疹

80代半ばの高齢者、前脛部に「完全に円形の」皮疹が多発。
直径は全て直径5センチ。内出血がみられるが、それぞれの皮疹で出血からの時間は異なる様子。
軽度の発熱、白血球はやや上昇。近所を徘徊しているところを救急搬送されてきた。

診断はなんでしょう?


18 基礎研究について


19 コカイン中毒の歴史/ジグムント・フロイト

シャーロック・ホームズのいわゆる「空白の三年間」(モリアティ教授との死闘から、ひょっこり再登場するまでの小説上の3年間)、
彼はフロイトのもとでコカイン中毒の治療をしていたんじゃないかとか、
いやいやそんな筈はないとか、興味ない人には一切興味ない感じの話だった。
よって僕も興味ない感じだった。

 

20 肥満症/ビタミン欠損症

病的肥満の治療のために胃切除を受けた患者、
術後にビタミン12の補給を受けなかったために重い神経後遺症が残ってしまったという話。


21 神経学的症候


22 肉親の死について

 

 


アメリカ人の書いた教養系の書物らしく、
手に取る人がその本に期待していることをしっかりと果たしたうえで、
それ以上の含蓄や感傷や,或いは感動や考察を一切残さないように非常に丁寧に作られた本だった。