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スクリーンじゃない、女優を見ろよ。             ヴァルコール「海の沈黙」

 
 
「あの素直な群衆をキリストの墓へ向って急がせた愛が、頭だけのものだったとでもいうのか?この愛によらずフランスを愛することができるか?

フランスは、ほかの国と同じような国ではない。

その資格があるにせよないにせよ偶然生れ合わせたために父子代々がその恩恵を享けただけの理由から愛するような国ではない。
人はフランスを、単に禁猟区に対する獣の執着のよって愛するのではないし、ゲルマン人の、遊牧の群に対する執着によって愛するのでもない。...

キリストの贖い主に対する信仰をもって愛するのだ。」


ナチス占領下のフランスで、後にレジスタンス文学と呼ばれるこれら一群の作品が現れたのに対して、同じく占領された日本ではそれを主題にした大きな文学は全く生まれなかった。

戦前・戦中にかけて(多分それまでずっと)、日本人が当時国体と呼ばれるものを、大して信奉もしていなかったからじゃないかと思う。


大正時代なんて15年しかないんだし、その頃モダン・ガァルだとかデモクラシヰだとか言っていた若い人たちが、
或いはアメリカのレコードを聴きはじめた人たちが、
第二次大戦が始まった途端に「本気で」体制幻想に浸るとも思えない。
その間、30年も離れていないんだし。

例えば明日からそんな情報が周りに溢れたとして、
50歳になった自分は、神の国が~とか本気で信じているだろうか。


若いときに文化の楽しさを知った人間が、自分みたいに好きな勉強して好きな所へ遊びに行った人間が、年食ってから灯火管制やら配給制の世界に放り込まれたら、身を割くような苦しさだろうと思う。

 海の沈黙/星への歩み (岩波文庫 赤 565-1)